METHOD / DIAGNOSTIC PROCEDURE
流派で計算結果が違うとき、
何を明示すべきか
「流派が違うから」で終わらせず、最初に違った中間値まで戻る。入力の差、実装誤り、採用方式の差、解釈の差を分けるための比較手順です。
「流派差」は原因名ではなく、調査の開始点
同じ生年月日を入れたのに別の命式が出ると、「流派が違うので」と説明されることがあります。しかし、実際には入力の扱いが違うだけかもしれません。タイムゾーンの履歴が違う、節入り時刻が粗い、出生時刻不明を勝手に補完した、あるいは単純な実装誤りという可能性もあります。
逆に、計算がどちらも正しくても、日界や時刻補正、蔵干の取り方、起運計算などで明示的な方式差が残ることもあります。「違う」という事実と、「なぜ違うか」という分類を分ける必要があります。
完成した命式ではなく、最初に違った中間値を探す
比較は下流からではなく上流から行います。通変星や用神が違うからといって、そこから議論を始めると原因が何段も隠れます。
- 01元入力
生年月日、出生時刻、時刻の確度、出生地、暦の入力形式。まず同じ記録を使っているか。
- 02民用時刻の正規化
出生地のタイムゾーン、歴史的なUTCからの時差、夏時間など。現在の時差を過去年代へそのまま当てていないか。
- 03追加の時刻補正
地方時・真太陽時などを使うか。使うなら何を基準に、どの式で、どの段階へ適用したか。
- 04境界規則
立春・節入り、日界、時辰境界など。境界時刻と完全一致した場合の包含規則も含む。
- 05中間計算
柱・盤・蔵干・起運など、採用方式によって値が分かれる箇所。ここで採用した系統と計算規則を特定する。
- 06派生値と解釈
通変星、強弱、格局、用神、傾斜、時期判断など。土台が同じなら、ここから先は計算差ではなく解釈差の可能性が高くなる。
差異は四つに分類すると扱いやすい
入力・データ差
元の出生記録、場所、タイムゾーン、時刻不明の扱いがそもそも一致していない。
計算・実装誤り
本来同じ規則なら一致すべきなのに、中間値が再現しない。バグ、古いデータ、丸め、固定日近似などを疑う。
採用方式の差
双方が意図的に別の境界規則・補正・系統を採用している。何を採ったかと影響範囲を明示する。
解釈差
命式・盤の計算事実は同じで、意味づけや優先順位が異なる。計算差として説明しない。
時刻の扱いは、流派差より前にデータ問題が潜む
海外出生や古い年代では、出生地の民用時刻をUTCへ正規化する時点で差が出ることがあります。IANA Time Zone Databaseのような実装向けデータベースも、地域ごとのUTCからの時差や夏時間規則の履歴を持ち、継続的に更新されています。
ここで重要なのは「tzdbを使えば占術上の正解になる」ということではありません。出生証明に記録された民用時刻を、どの時間軸へ復元したかを再現できることです。その後に真太陽時などの占術上の補正を採るなら、それは別のルールとして重ねます。
節入り・立春は、方式差と精度差を分ける
四柱推命の年・月境界では、立春や12の節の時刻が影響します。ここで結果が違う場合も、最初から「流派差」とは限りません。
- 同じ12の節を境界としているか
- 節入りを固定日・概算時刻で置いていないか
- 天文計算方式または暦表の出典と採用版が分かるか
- 公表表示の精度を超えて境界時刻を作っていないか
- 出生時刻と境界時刻を同じ時間軸で比較しているか
- 完全一致の包含規則が一致しているか
同じ規則を採ると宣言している二つのツールが、同じ入力・同じ時刻基準でも違う月柱を返すなら、まず計算実装またはデータの差を調べます。方式差として片づけるのはその後です。
「別方式では何が変わるか」まで書く
採用方式を明示しても、名前だけでは実務に足りません。HitoYomiでは、方式差を扱うときに少なくとも次を残すことを基準にします。
分岐点
どの入力・境界・中間計算で結果が分かれるか。
採用
HitoYomiが何を採ったか。未採用・未解決なら、その状態をそのまま残す。
影響範囲
柱だけが変わるのか、通変星、強弱、用神、時期判断など下流まで変わるのか。
これがあれば、将来ルールを更新しても、過去案件を「当時どの計算で出したか」まで追えます。
ツールが最低限残すべき監査情報
- 元の出生入力と、その確度
- 正規化後の時刻とタイムゾーン識別子
- 出生地座標または「不明」の状態
- 追加時刻補正の有無・計算式・採用版
- 節入り・暦データの出典・計算方式・採用版
- 日界・時辰・完全一致の境界規則
- 柱・盤へ至る中間値
- 採用した系統・計算規則
- 未解決の候補と、それによって変わる下流項目
- 解釈を計算事実とは別の層で保存すること
相談者には「どちらでもいい」とは言わない
「この部分は計算方式が分かれる箇所です。今回はAの方式を採っています。Bを採ると月柱が変わるため、その先の一部の読みも変わります。一方で、どちらの方式でも変わらない部分は共通して読めます。」
方式差を説明する目的は、相談者へ専門論争を見せることではありません。今回の結論がどの前提に立ち、別前提ならどこまで変わるかを明らかにすることです。
HitoYomi Originalは、流派を平均しない
HitoYomiは学派・流派を研究対象にしますが、複数の結論を並べて多数決にするためではありません。古典、原理、計算法、現代実務まで遡り、採用できるものは採用理由を明示してHitoYomiの一貫した体系へ組み込みます。
十分な根拠がなければ、無理に一つへ決めません。採る・採らない・まだ決めないを区別できること自体が、専門家向けの再現性です。